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山崎和夫の旅日記・奄美大島編-1

ある年の春、私はヘルメットの中で歌を歌いながら東名高速をバイクで西へ西へとひた走っておりました。ふだんは高速道路が嫌いでどこに行くにも下道、つまり一般国道で行く私ですが、この時はそんな事言ってられません。目指すは鹿児島インター。東京から東名、名神、中国道、九州道と乗り継いで1386km、たっぷり2日はかかります。日本も広いのです。

今回の目的地は奄美大島。九州の南方380kmくらいにある小さな島で、黒糖焼酎の産地です。私はこの何年か前からこの島にハマり、当時毎年のように通っておりました。奄美大島をはじめとする奄美群島は、昭和20年9月に米軍によって日本本土から分割され米国の統治下におかれました。しかし本土復帰運動が高まり、昭和28年12月に日本に返還された島です。沖縄と違ってこのことはあまり知られていませんね。

黒糖焼酎は、もっぱらワインを飲まれるみなさまにはなじみのないお酒かと思いますが、サトウキビの搾り汁を煮詰めたものと米麹を合わせて造られる甘い香りのする焼酎です。ラムに似ていますがそれよりもずっと繊細な味わいで和食にとても良く合います。製品のアルコール度数は30%が一般的ですが、氷無しの水で1:1に割ってアルコール度数を15%くらいに調製し、赤ワインくらいの温度で飲むのが私のお気に入りです。

焼酎はいろいろな原料から造られますが、実は酒税法により黒糖を原料として造る事は禁じられているのです。しかし、奄美群島には前述のように日本の法律が適用できない期間がありました。そのため例外として認められています。つまり黒糖焼酎は、日本では奄美大島をはじめとする5つの島でしか生産することができません。東京でもブームになっている黒糖焼酎ですが、どこでも造られるというわけではないのです。

奄美大島へは鹿児島からフェリーで渡ります。夕方乗船し船中で1泊、翌朝到着というわけです。この船は島で暮らす人たちの生活航路でもあり、船内は本土との間を行き来する人で一杯です。あちこちで理解できない方言が飛び交っていて、ちょっとした異国情緒があります。もちろん飛行機で渡ることもできますが、のんびり船旅も楽しいものです。私は焼酎の蔵巡りをするようになってから離島に渡る機会が多くなり、本当に船旅を良くするようになりました。

(続く)