ソムリエ試験 合格者の感想とアドバイス 野州の景虎さん
第5章: 二次試験当日 各ワインの感想
いよいよ本番を迎え、普段であれば私にとって分不相応な高級ホテルにて、各地でワイン関係者が一堂に会し、一斉に二次試験を受けました。受験者の多さと会場の雰囲気に圧倒され終始緊張していただけでなく、実は厄介なことに、この日に限って下唇に大きな口内炎ができてしまいました。
口内炎の痛みが、ワインの酸味と錯覚してしまうという危険と隣り合わせの状態でしたので、テイスティングの際には、とにかく患部を刺激しないよう慎重に口に含みました。
5つのグラスを目前に、私はこれまでの先入観や邪念を一切捨て、真っ白な気持ちで試験に臨もうとしました。提供されたそれぞれの飲料について、次のとおり感想をまとめました。
1. ソーヴィニヨン・ブラン 2018(NZ)
最初、何を勘違いしたのか「柑橘系の爽やかな香りに、樽もある...のか?」ということから、チリの樽香があるシャルドネを選択しそうになりました。
しかし、落ち着いて匂いを嗅ぎなおすと、そこにはスゥーっとしたハーブや麝香っぽい香りが交ざり、まさに「猫のおしっこ」とイメージできたので、収穫年は外したものの、品種と生産国は当てることができました。
コメントの選択も、これに準じて適当なものをそこそこ選べたのではないでしょうか。
2. 甲州 2017(日本)
こちらはなんと、品種・生産国・収穫年の3つ全てをとらえることができました。
まず、1のワインよりも色合いが薄く、香りも際立ったものはなく、そして何より「パン・ドゥ・ミ」と表現できる酵母っぽい香りを自分なりに感じたので、迷わずその通りの回答をしました。
コメントの方向性も概ね合っていると思うのですが、香りの第一印象は「控えめ」と、もう一つは何を選ぶのが正解だったのでしょうか...? 結局分からず終いで、やむを得ず「複雑」と回答しておきました。
3. サンジョヴェーゼ 2015(イタリア)
残念ながら、こちらは香り以降の方向性を見失ってしまったと思います。なぜなら、比較的淡い色調、赤いベリー系にわかりやすいオーク樽の香り、そしてあまり渋みを感じなかったことから、安直にアメリカのピノと結論付けてしまったからです。
あの時、口に含んだ余韻に、ピノにしては若干タンニンが残ったような...? と僅かな違和感を覚えたのですが、最初の勘を信じて後戻りすることはしませんでした。
間違えたことは確かに悔しかったのですが、「こんなきれいな味わいのサンジョヴェーゼがあるのか!」と、一方で素直に美味かったという感想も抱きました。なお、収穫年だけは合っていました。
4. カベルネ・ソーヴィニョン 2015(AUS)
外観と香りから、ニューワールドで濃厚、渋みのあるワインというところまでは分析できました。香りのコメントなども、この分析に基づいたものを選択したので、概ね合っていると思います。
しかし、品種で三択の迷いがありました。「ジンファンデルのような甘い香りはするけど、そこまで強くない。カシス系の香りもあるけど、カベソーにしてはタンニンが緩やかな気がするし、全体的にそこまで香りが突出していないのでは?」とあれこれ考えた末、チリのメルローと回答してしまいました。
自分なりに、中庸っぽいイメージがあったのですが。こちらも収穫年は合っていたようです。若さが抜けてきているが、そこまでは古くないと思い、3、4とも2015を選んでみました。
5. 紹興酒
実はこちら、ある程度消去法で回答しました。紹興酒自体飲んだことはあるのですが、薬っぽい味わいということぐらいしか覚えていなかったので、結構不安もありました。
しかし、他の3つについてはスクールにて味・香りともに経験しており、特徴的にそのどれにも当てはまらなそうということから、最後に味もチェックしたうえで、紹興酒を選択しました。
...この感想を振り返ってみると、結局あまり先入観を捨てきれていませんでしたね(笑)。
試験時間は余裕
試験時間は50分でしたが、結構余裕でした。正味35分といったところでしょうか。余った時間で、指定された数どおりマークしてあるか、きちんと鉛筆で塗りつぶせているかなどをくまなくチェックしました。
そして同日の17時頃、予告どおりソムリエ協会のHPにて銘柄等が発表されました。全て私の思い違いで、外しまくっていたらどうしようと、HPを見るまではひたすら動揺していましたが、ある程度解答できているのを確認し、ささやかな安心感が得られました。