テイスティング・コメントの選び方・香りの特徴(基調香)
基調香
教本にはっきりとは書かれていませんが、まず最初に日本酒の重要な香り「基調香」について知っておきましょう。
日本酒の香りは、「上立ち香」と「基調香」に大別されます。ワインの世界では上立ち香は「トップノート」または「オルソネーザル」と言い、基調香は「ベースノート」または「レトロネーザル」と言います。
上立ち香とは簡単に言うと、沸点が低い香り成分で、グラスに鼻を近づけた時に感じる香りです。華やかな吟醸香が代表的な上立ち香です。
基調香とは逆に沸点が高い香り成分で、グラスからなかなか立ち上って来ないので、酒を口に含んで確認する必要がある香りです。日本酒のテイスティングでは基調香が重要なので、日本酒の香りは、グラスに鼻を近づけるだけではなく、口に含んで確認する必要があります。
日本酒の基調香の代表的なものとして、下記の2つの成分があります。この2つの香りを合わせて嗅ぐと、「普通の日本酒の香り」が感じられます。
- 1. 高級アルコール
- ホワイトボードマーカー様の香りで、酵母が発酵中に生成します。精米歩合が高く、発酵温度が高い場合に多く生成される香りです。高級アルコールは、常圧蒸留の焼酎の香りでもあります。
- 2. フェネチルアルコール
- 甘いバラの花様の香りで、酵母が発酵中に生成します。こちらも精米歩合が高く、発酵温度が高い場合に多く生成される香りです。日本酒の甘い香りの正体です。
基調香は、上立ち香(例えば華やかな吟醸香)が強いとマスクされて感じにくくなるので、主に純米酒や本醸造酒など、もともと香りがおだやかで、精米歩合が高い酒に良く感じられます。
選択の指針
SAKE DIPLOMA試験では、日本酒の基調香を下記の2つで表現します。
- 1. グレープフルーツ
- 高級アルコールに由来する、ホワイトボードマーカー様の香りを表現します。
- 2. スイカズラ
- フェネチルアルコールに由来する、甘いバラの花様の香りを表現します。
純米酒や本醸造酒など、香りがおだやかで、精米歩合が高い酒は、この2つが正解になりやすくなります。特にスイカズラは良く正解となりますので、忘れずに選択しましょう。